給料日ラジオ

毎月25日頃21:00~配信「ありまよとアオヤギの給料日ラジオ」を淡々と書き起こします

映画『天気の子』は『君の名は。』の300倍傑作 (2019/7/31)

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ありまよ 今回は出だし早いですね! 人が多いのでタイトルコールをやっていきましょうか。ありまよとー?

アオヤギ あおやぎのー?

ありまよアオヤギ 給料日ラジオ~!

ありまよ いつもの説明から。 給料日ラジオとは、アラサーOL2人が給料が入って気分がいいので好きなコンテンツの話や、最近のインターネット痛ましい話について語るラジオです。会社員はいいぞ。

今月のテーマ『天気の子』……の前に、『マジLOVEキングダム』

ありまよ 本来、今月は『呪術廻戦』をやろう!と告知していたんですが、緊急特番。

アオヤギ 3日前くらいに急遽「これは天気の子じゃね?」って決まったんですよね。

ありまよ ということで『天気の子』になりました。感想や質問はマシュマロ#給料日ラジオコメントで下さい。今日読み上げるのもまだまだ募集中です。
……と、お話しする前に、実は前回からの宿題がありまして。『マジLOVEキングダム』を見てください!という激アツマシュマロが前回来たんですが、そのあともいくつかアツいお便りが届いております。ありまよは慌てて履修してきました。

アオヤギ アオヤギは見れずでした……すまねえ。

ありまよ マシュマロを読んでいきます。給料日ラジオ最長のアツい長文メッセージで、うれしかったので全部読みます。

 

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ありまよ うたプリ勢、アツい。1通目の人は……めっちゃいい彼氏だよね!

アオヤギ だし、いい彼女だ……。素晴らしいマシュマロですね。

ありまよ 素晴らしいものは世界みんなで楽しんでいくべきなんだな。

アオヤギ ありまよさんはこれまで、マシュマロの彼氏と同じくうたプリを履修してなかったんですよね?

ありまよ そう。全然履修していないけど、けっこう友だちでハマっている人はいるので、なんとなくキャラは知っている……マシュマロにあるように声優が豪華だよね、ライブとかやっているよね、くらいのイメージでした。それが今回見に行ってね、面白かった!(語彙力がない) どエンタメでしたね。

アオヤギ ありまよさん、だれ推しになるんだろう?とちょっと気になっていました。

ありまよ そう、見つかりましたよ、みなさん! 推しキャラが! 今日はその報告をさせていただきたいんです。

アオヤギ 以前話したときは「知的な黒髪男子が好き」みたいなことを言ってたんですよね。だから(トキヤか真人の)二択かな~と思っていたのですが……?

ありまよ 意外なところ来ました。ナギくんでした!

アオヤギ マジ?

ありまよ まじ。ナギくん……でしたね!(2回言った)あんまりショタキャラってハマったことなくて、ふだんグッとこないんですけど。ナギくん、よかったです。普通にパフォーマンスがよかった。ただのドルオタ視点。

アオヤギ ありまよさんはけっこう男子アイドル見ているから、そういう視点。

ありまよ ファンサのプロみがすごいんです。見た方はわかると思いますが、ユニット曲の最後のウィンクでやられましたね。さらに、ユニット曲がメッチャかわいいんだけど、そのあとグループで歌う曲はかっこよくて……そのギャップにやられました……。

アオヤギ 演出のうまさは、男性アイドルでいうとどういうグループになるんですか? そういうギャップの出し方は男性アイドルあるあるなんでしょうか?

ありまよ ユニット曲やソロ曲はメンバーの意見が演出に反映されやすいので、思い入れのある曲増えがち。どれも良かったんですけど……でもナギくんのパフォが一番気合入ってたな。

アオヤギ すごい現場オタみたいなしゃべり方になっている(笑)。

ありまよ 現場オタの目線ですよ! だから一番よかった曲は「愛を捧げよ」です。現場オタクだったらヘブンズのFCすぐ入ってますね。 演出について思うことは、ちょっと難しくて……。うたプリリテラシーがあんまり高くないので、オタの人にとっては「そんなことないよ」ってなるかもしれないですけど、「このあとこういう展開になるんだな」が尺的に読めちゃう構成ではありましたね。

アオヤギ 確認ですが、今回は「ライブをやる」コンセプトの映画なんですよね?

ありまよ そう。各3グループが持ち歌を歌って、そこからシャッフルユニットに入るんですが……

アオヤギ シャッフルユニット、オタクが好きなやつ!

ありまよ そう! ただシャッフルユニットが始まった瞬間、「あっ、これ2時間弱の映画で、この時間でシャッフルユニットが始まったということは、シャッフルユニット数組最後までやって、もう1周各1曲グループ曲をやって、最後に全員で歌って、一旦はけてエンドロールの後、アンコールでツアーT着て出てくるな」ってわかってしまう。

アオヤギ それはね……違うと思いますよ。普通に見てる人は思わないと思う!

ありまよ いや、王道なんですよね。王道のアイドルコンサートの構成になっている。それを予定調和だってディスるのも無粋な気がするし、曲をちゃんと知っていて今までの物語を追ってきた人は「あっ、この曲(のセレクト)なんだ!」というところで感動ポイントがあったと思う。私はそこがあんまりうたプリリテラシーがない状態で見てしまったので残念でした。うたプリ追いかけている人たちにとっては、選曲や曲順に文脈があったかもしれない。

アオヤギ 映画では春歌ちゃんってどういうポジションで出てくるんですか? 選曲や順番に春歌との関係、メンバーのヒストリーが反映されているのかなーと気になっています。

ありまよ それはね……見てください!(笑) すごく細かいところに盛り込まれていて、泣けます。

今度こそ『天気の子』!

ありまよ さて。そろそろ『天気の子』の話いきますか。今回、構成稿の「作品紹介」の欄を書いたのはアオヤギさんなんですけど……「傑作」とだけ書いてあった。……何も書いてない!

 

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アオヤギ 十分でしょ! 「傑作」で十分ですよ。

ありまよ というわけで書き足しました。新海誠監督、劇場版長編7作目になります。

アオヤギ あらすじは、東京に出てきた家出少年・帆高。バイト先が見つからずさまよう中で、とあるきっかけから縁があった編集プロダクションの社長・須賀に拾われ、住み込みで働くことになる。雨続きの2021年の東京で、新しい日々をスタートする帆高。そんな中で、帆高は新宿の町で少女と出会う。彼女は祈れば晴れにすることができる「100%の晴れ女」だった……。というのが出だしのところですね。まあ……傑作なんですけど。

ありまよ それぞれの感想いきますか。ではアオヤギさんから。

アオヤギ 『君の名は。』の話を避けては通れないと思うんですね。『君の名は』は3年前に公開された映画で、最終興行収入が約250億円。異常な数字ですよ。邦画の興行収入で歴代2位。1位が『千と千尋の神隠し』です。そんなかなり金字塔的な作品になってしまったのが『君の名は。』です。その監督の最新作ということで注目を集めていたと思うんですが……私、正直『君の名は。』が公開したときって、ビジネス的には興奮していたんですよ。スタートダッシュもすごくて、その前の作品『言の葉の庭』の最終興行収入2億円と比べたら100倍以上。全然スケールが違った。でも作品的にはいまいち乗り切れなかった。『言の葉の庭』のほうが好きだな、と思っていたくらいでした。

ありまよ 『言の葉の庭』、好きなんや……!

アオヤギ 好き! 中盤まで抱いていたフラストレーションが、ヒロインが感情を爆発させるシーンで「許した」って思わされました。『君の名は。』がすごく出来のいい作品なのはわかっているが、個人的には乗れないという気持ちでした。『天気の子』は予告見てもよくわからない話で……

ありまよ 予告だけじゃよくわからないですよね。「なんか雨降って? やむんだろうな?」みたいな。

アオヤギ そう。「どうなんだろうな~(疑い)」って映画館に行って、終わった瞬間「傑作やんけ!!!」と。新海監督がなんだろう、すごく成長してしまった。クリエイターとして『君の名は。』で達成したところのはるか先に進化した。(シン・ゴジラの)蒲田くんだったのが、二足歩行できるくらいに……。それくらいの大興奮で、『天気の子』を見てからというもの、ずっとインターネットで話し続けています。ありまよさんは?

ありまよ 前提条件から話すと、私は今まで新海作品にあんまり乗り切れたことがなくて。先に(周りで)見ていた人たちも、賛否がばっくり分かれていたんですね。「最高だ!」という人と、「全然ダメだった」という人、なんだったら「倫理的に許せない!」と激怒している人もいて。私は後者の怒っちゃう方になるかなと思っていたんです。見に行くかどうかも悩んでいたくらいでした。とにかくあらゆる人に「まよさんは嫌いだよ」「好きになる要素が一つもない」「設定ガバガバに目をつぶって弟に萌えろ」「新海誠作品だと一回忘れて見て」とか言われながら、ハードルがん下げで見に行ったら……「あれ、なんか意外にいいやんけ!」となって。結論としてはすごくよかった。

アオヤギ 「ガバガバ」って言った人に、ひとりひとり「ああん?」って言いに行きたいぜ……。ありまよさんは要素要素は嫌いでも、全体としてはええやんって思うと信じてました!

ありまよ 要素も嫌いじゃないですよ。セカイ系に対して、「おれはセカイ系が嫌いなんじゃない、セカイ系やれやれ男が嫌いなだけなんだ!」ということに気づきまして。あらゆるセカイ系、もしくは一滴でも村上春樹の血が入っているものは好きになれないと思ってたんですけども……。

アオヤギ 入ってましたよ、春樹の血! 人間の血液で言ったら1リットル分くらい入ってると思う。

ありまよ いや~『キャッチャー・イン・ザ・ライ』とか出てくるけど、この作品が”春樹的”かというと、別に春樹的じゃないですよね。ジュブナイルだなと思った。ジュブナイルファンタジーとして観たら良作。あとは帆高が全然「やれやれ」じゃない。

アオヤギ そうですね、常に前のめりの男。

ありまよ 前のめってて、行動するシーンが多い。帆高くんが常に動き回っている、しかもヒロインと一緒に動き回っている。たぶん新海誠作品史上、最も長い時間を一緒に過ごした主人公とヒロインですよね。
これまで乗れなかったのは、『君の名は。』でもそうでしたが、「なんでこの人がこの人を好きなのかよくわからない」というのがあって。『天気の子』は「こんなレアな体験を一緒にして、胸をふるわせて、きれいな景色を一緒に見て、しかもお互い身寄りがあんまりなくてさみしい時期に10代の子同士が出会ったら、それはお互い好きになるよね」というところに説得力がある上に、その気持ちに対して帆高くんがまっすぐに行動する。
ダメなセカイ系の主人公だったら、物語後半で「助けに行くかどうか」で半年くらい悩んでるよ! 晴れるたびに空を見上げて「晴れと引き換えにいなくなった彼女のことを思って僕は胸が痛むんだ……」みたいなモノローグが5分くらい続いちゃうと思うんですよ。そうじゃなかったのがメッチャよかった。

アオヤギ そうなんですよね、決断が速い。

ありまよ 葛藤もいい意味で全然しない。

 

設定がガバガバ?

ありまよ 「設定ガバガバ」については、私もちょっと思った派なんですけど、でもガバガバで行く宣言がわりと冒頭からされている気がする。最初の船に乗って東京に来るシーンで、雨が降るとなった瞬間に帆高くんが甲板(デッキ)に出て、カジュアルに死にかけて、カジュアルに須賀さんに救われて、「初めて俺、人の命の恩人になったわ~」みたいなやりとりがあるじゃないですか。あそこで「あっ、もうこの物語のリアリティラインはこのあたりなんだな」と思って。

アオヤギ うーん???

ありまよ まじめに怒るなら、「あんな大嵐が来てるのに船の外に出ていくなよ!ふざけんなよ」というところで激怒しなきゃいけないじゃん? リアルな話だったら。

アオヤギ まあそうですね。あのシークエンスけっこう謎だったんですけど、今思うと……リアリティラインというのかはわからないけど、「宣言」だとは思っていて。「この主人公は、一般の人と逆行する人間なんです」というのを冒頭のシーンで描いている。

ありまよ 描いているし、「この作品世界においては、主人公の逆張りは“アリ”になりますよ」というのが冒頭で出ていますよね。「こいつの前のめりはそういう感じでオッケーってことね!」となって見たので、そのあとは全然気にならなかった。

アオヤギ うーん……でも「設定がガバガバ」っていうのはわかんないんですよね。みんなが「設定」と言っているものは何?

ありまよ たぶんいくつかあって。まず拳銃の扱い問題を指摘している人はいましたね。あと「人柱の設定、もっとちゃんとやらなくていいの?」とか。でもこれは私の中では“スーパーセカイ系ジュブナイルファンタジー”なので、「そんなの描いたら無粋だろ!?」終了、という感じで処理されていたので、気にならなかったです。

アオヤギ 私は「必要情報は全部書いてあるじゃん」派なんですよ。「拳銃の扱いが中途半端」説もマジで納得いっていなくて。拳銃に物語内で与えられている役割は全部果たしていると思うんです。さらに言うと人柱の話も作中で全て説明されていると思うんですけど……

ありまよ 「あんなもんじゃね?」という感じですよね。

アオヤギ 何をみんなが求めていて「ガバガバ」って言っているんだろう……というのがわからなくて。他の人に聞いてみたら、『君の名は。』と比べている人がけっこう多いようで。『君の名は。』は「宮水の血」「1000年に一度」「宮水の血で発生する入れ替わり」という設定があった。あの悲劇を回避するのに三葉である必然性があった、ということが設定で語られています。一方、『天気の子』の設定はそうではない。祈りながら鳥居をくぐったら、天気の子の力を手に入れられる。それを「楽勝ゲーじゃん」と言っている人もいましたけど、しかしそれは設定がガバガバとは言わなくない? 「強い思いを抱きながら鳥居をくぐったら空とつながる人がいる」というのは、そういう設定としてちゃんとしてるじゃないですか。設定がガバガバって言ってる人を機関銃でガーッてやりたい。

ありまよ 設定ガバガバサイドの人がいたらコメントほしいですね。拳銃については、よく言われる「作劇上拳銃が出てきたら絶対に撃たれなければならない」という話がありますが、その撃たれ方がちょっと不満だったりしたのかなー?

アオヤギ 撃たれてたやーん!

ありまよ あれも私はジュブナイル文脈で見ていて。少年×拳銃は『スタンド・バイ・ミー』などから続くひとつの殿堂テンプレですよね。

アオヤギ 少年が突然手に入れてしまう力として、拳銃ってよく使われている。

ありまよ 最近も高野雀さんの、女子高生がいきなり拳銃を手に入れてしまう『世界は寒い』がありましたね。ひとつジャンルとして確立しているものなので、そこもあまり気にならなかった。拳銃の描かれ方も「一生懸命な主人公が持つあやうさ」の象徴としてのみ書かれているから、割り切れていてよかったんじゃないかな?と思いました。あれで「うっとりと銃身をながめる」みたいな描写があったらやばい。でも基本はカバンの中に入っていて出てこないというのが、(拳銃の扱い方を)示しているかなと。

アオヤギ 一回捨てるしな。

コメント:拳銃はメタファーとして役割を果たしていた。少年少女の浅はかさを描く上で、あの拳銃と晴れの力は大切なアイテム 

アオヤギ 全く同じことを思っています。陽菜の晴れ女の力と、帆高の拳銃が対比としてある。どちらもその力は一時的な打開にはなるけれど、根本的な彼/彼女にとってのピンチを招くものとして描かれている。「うまいやんけ…!」と思ったんだけどなあ……。

コメント:陽菜さん雷アタック 

アオヤギ それも確かにそうで、最初に陽菜ちゃんが銃を撃った帆高に対して「信じらんない、気持ち悪い」と言うじゃないですか。それが後半の雷アタックシーンで全く同じことが陽菜に来てしまう。

コメント:お願いサンダーは正直笑いました 

ありまよ 「お願いサンダー」って言うんだ、あの技……(笑)。

アオヤギ お願いサンダーに雷アタック。すごいヒロインですね。

コメント:拳銃撃ったときと、雷で、手を取って逃げる立場が逆

アオヤギ そう。そこは対比的に描かれているよねー。

コメント:設定ガバガバがクラスタごとにあるのはわかるけど、ファンタジーじゃんって思う部分と、描写の細かさがリアリティーを担保している部分がある 

ありまよ ファンタジーじゃん、と私はけっこう思った派。でも確かに、倫理観の問題も含めて、作り手を支持できるかどうかは留保がつきます。登場人物は100%支持できるけれど、作り手を支持できるかというと……。
私、実家が広島なんですけど、去年豪雨災害があって、友達の実家が半壊して住めなくなってしまったりしたんですね。「あれをああいう書き方していいの?」というところは保留、態度を決めかねているところではある。でも「ファンタジーじゃん」と自分は許しちゃった部分もありますね。

アオヤギ あれで不謹慎だと言われたり、怒られたりするのは覚悟して作っているなと思っていて。何も覚悟しないでぺろっと出して、「怒られちゃった、すみません」ってやるのはダサい。でも作り手は、公開時期に全く同じタイミングで豪雨災害が起こることもありえると思っていて、実際近いことも起こっているわけですが、全部覚悟の上で作っているので、支持できるかどうかはおいても偉いなと思います。でもあれで怒る人がいるのは当たり前だし、そういう作品を作っているからしょうがない。

 

食住の350dpiと衣の72dpi

ありまよ 陽菜ちゃんについてマシュマロいただいているので読みますね。

 

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アオヤギ えー、陽菜ちゃんめっちゃよかったやんけー!!!

ありまよ 私は陽菜ちゃんの服がださいことだけは許していない! あの服はもうちょっとどうにかしてほしかった。

アオヤギ 陽菜ちゃんの服がダサいっていうけど、現実を考えたとき、新海誠×ユニクロUTのコラボTシャツが「お前は誰だ?」Tという伝説のダサい商品があるわけですよ。現実でこんなダサい服があるんだから、アニメの女の子がダサい服着ててもいいじゃん! ……これは信者の言い方ですが……

ありまよ 私が陽菜ちゃんの服ださい問題に怒っているのは、「衣食住」を描くときに、「衣」の解像度だけ以上に低いんですよ。だって事務所のトイレの壁に貼ってあるものの作りこみとか、カップ麺の描き方とか、あそこまで精緻に描いているのに……なぜ服だけが!? だって1日GUに行って鬼買いしてくれば、絶対リアルな服が描けるはずなんですよ!

アオヤギ でも、須賀さんはけっこうリアルな服着てません?

ありまよ 普通の服だけど、あそこから須賀さんの内面とか読み取れないじゃないですか。

アオヤギ うーん……陽菜ちゃんも内面読み取れないかな?

ありまよ 部屋からは読み取れますよ。貧乏なりにちょっと工夫して暮らしている、かわいいレトロな感じの部屋で(内面やキャラクターが)出ている。食住の解像度が350dpiくらいあるのに、衣だけ72dpiくらいしかない!

アオヤギ 印刷に堪えないWebコンテンツだ!

ありまよ ガラケーコンテンツで、そこがものすごく気になってしまう。服はもうちょっと普通の服を着せてくれ……という気持ちになった。

アオヤギ 信者目線で擁護すると……

ありまよ 信者の擁護、来る~!

アオヤギ 服がダサいというのは、まったくもっておっしゃる通りですが! アニメ的な理屈として、背景は動かさないけど、服って動かさなきゃいけないじゃないですか。だから簡略化しないといけない。さらにその中で絵としてあんまり情報が足されない、邪魔されないくらいで、でもかわいい(華がある)を目指したときに、謎のねじりみつあみとか、謎のフードとかついちゃうかな……と擁護したいんですけど……でも帆高が陽菜ちゃんの家に遊びに行ったときの謎のひよこ服はどうにもダサかった。

ありまよ あのひよこいらないじゃん! 最後の方で着ていたショーパンに無地の白Tはかわいかった。全部あれでいいじゃん!
でも男子に「陽菜の服のダサさが許せない」という話をしたら、「脇を描きたかったんだよアレは」と返されて、じゃあしょうがない!!!となった。

アオヤギ フードも、「ふわーっとなってるところ描きたい」ですよ。

ありまよ ノースリ+フード~~~!!(苦悩)

アオヤギ ノースリにもちゃんと信者目線では意味があって。もちろん脇を描きたいというのはあるじゃん?それはそれとして、終盤陽菜の体が透明になったりするじゃないですか。夏なのに長袖を着はじめている。そのギャップを作るのは、GUの半そでTシャツじゃだめなんですよ!

ありまよ なんかあるよ! GUのフレンチスリーブとかあったはずだよ!

アオヤギ それは新海誠×GUコラボで……。

ありまよ でも陽菜ちゃん、いいですよ。これまで見た新海誠作品の女性キャラの中では、限りなく人間だと見ました。

アオヤギ 三葉に関しては「いつ瀧くんを好きになったのかわからん」というのがある。私は過激派なので、お互いと入れ替わる超スペシャルなことが起きているのだからそれだけで好きになってもしゃーない派なのですが、それはそれとして「なんで好きになったの?」という正直な気持ちもある。

ありまよ だったら入れ替わったことへのフィジカルなものがどうメンタルに影響したのかとか、もうちょっとていねいに描かれて然るべきですよね。おっぱい揉んでるくらいしかなくて、描写が。活動的な女の子っぽく三葉ちゃんが変わった、とかもありましたが。

アオヤギ 思うんですが、もし岡田麿里が『君の名は。』の脚本書いたら、絶対生理の話やりましたよね。それをやらないから興収250億円なんだけど……。

ありまよ さっきからFEEL YOUNGの話ばっかりしてる気がするんですけど、『君の名は』を見たときに点が辛かったのは、ちょうどあの時期ヤマシタトモコさんがおじさんと女子高生の中身が入れ替わる『WHITE NOTEPAD』を連載していたんですね。どこまでが自分の人格で、どこからが社会的な相手の状況を受けた自分の性格なのかが、わからなくなってしまう葛藤が描かれていて。そういう話じゃないのはわかりつつ、その繊細さをちょっと求めちゃって不満だったところはあるかもしれない。

アオヤギ わかりますね。ヤマシタトモコのあの作品はオチ以外は最高だったと思っています。オチがよければ『ひばりの朝』を超える最高傑作になったのでは……。

ありまよ でも『違国日記』、すごくいいよ。

アオヤギ いいですね。ただ最初百合だと思って読んでいたら、百合じゃなかった……。話を戻して、陽菜ちゃんはすごくいいヒロインだったと思うし、陽菜ちゃんを帆高が好きになるのはわかる。ただ陽菜ちゃんが帆高のことを好きかどうかは描かれていなくて、すごく特別な存在ではあるんだけど、帆高のような感じで好きだったかどうかは描かれていないんですよね。

ありまよ たぶんちょっとそこまでじゃない感じですよね。

アオヤギ 陽菜ちゃんはいまいっぱいいっぱいで、恋愛とかしてる余裕ないと思う。

ありまよ その場にぽっと現れた異性に対するときめき度よりは、いきなり巫女として世界に対して自己効力感をバキバキ発揮できちゃって人生が急展開してる……! ってことのほうがビッグなイベント。吊り橋効果的に、ひいてはそれを提案してくれた帆高への愛情にすり替わっていく要素はあるが……という印象です。

アオヤギ 一番象徴的なセリフが、「私、好きだな。(間)この仕事」。あれは本当にいいセリフでしたね。二人のちょっとした差というか…帆高は陽菜を意識しているけど、陽菜は仕事のことを考えている。ギャップの描き方がうまい。

ありまよ 昨今のフェミニズムの盛り上がりを、新海監督も見ずにはいられなかったのでは……。

アオヤギ 関連インタビューをいろいろと読んでいるんですが、『君の名は。』は観客のテンショングラフで作られている。『天気の子』は複数人でブレストして作った部分があって、キャラが何を考えて行動しているかを、監督がひとりで考えたのではなく、5人くらいで理屈と情動を考えているんですよね。陽菜は女性スタッフを入れて作っているのもあって、違和感がないと思う。逆に夏美は割り切って「これは夢!」で作っているので、夏美は全員男性で作っているとのこと。フィクションとしての魅力を損なわないように思いつつ作っているんだなと。

ありまよ ピクサー的な。夏美ちゃんはフィクションとしての魅力、あります?

アオヤギ 負けたな……と思ったのは、二回目の「帆高くんさあ……いま胸見てたでしょ」のカット。私、胸見ちゃってたんですよ。顔じゃなくて胸を……。新海に敗北しました。

ありまよ ジュブナイルという話をずっとしてるんだけど、それでいくと今回中学生でもよかったんじゃないかな。何なら小6くらいでも。

アオヤギ だめ~!それだと『ペンギン・ハイウェイ』になるじゃないですか!

ありまよ あの辺の性的な要素、必要……?

アオヤギ 必要!(ドン!)男の子から女の子に対する、「いやらしいわけではないが意識せざるをえない」性的なニュアンスって、ちゃんと描ける人いなくないですか?

ありまよ 「胸見てたでしょ」という小さなラッキースケベみたいなものが、2019年現在、一番いけてる「性欲までいかない豊かな感情表現」なのか?というところに疑問を感じてしまった……。須賀さんのダメ男的な感じ、クラブで飲んだくれてる、部屋からブラジャーが出てきちゃう、みたいな表現も「そうだよね、その要素がないと須賀っていう人間にはならないよね」という気があんまりしなくて、キャラっぽいアイテムになっちゃってないかな、というのが気になります。ふつうのアニメだったらいいんですよ、でもそれ以外のところで350dpi、8K映像みたいなもんじゃないですか! 町とか、部屋とか、メイン2人、凪くんのディテールは凝ってる。
凪くんは陽菜ちゃんにもないディテールの力の入れ方があって、サッカーの練習後にだべってるシーンで、レガース(すねあて)が蒸れるからソックスを下ろしてるんですよ! あれは皆やるんです、サッカー部は絶対。そういう丁寧なディテールの積み重ねがあるのに、そのひよこの服はなんだ!?と。 

コメント:わかる。レガースのシーンがリアル!

アオヤギ 全然気づかなかった。凪君の顔ばっか見てた。

ありまよ さらに凪くんは、ラストシーンで物語上機能するんですよね。凪くんがいないとやばかった、ていう場面がある。三葉の妹は物語上重要な役割を持つかっていうとそうでもないんだけど、凪くんはちゃんと機能していて。
そんな凪くんがあの陽菜のヒヨコの服をほっておくわけないんですよ! だって自分のガールフレンドに「髪巻いた?」って聞いてる男の子だよ!?「ねーちゃんその服ダサいから、GUとかでいいからこれ着なよ!」って買ってくると思う!

アオヤギ 凪くんの服はダサくないし。

ありまよ ださくない。絶対、陽菜の服は見かねた凪くんが買ってると思う。「にじり三つ編みださいよ!」も言ってくれるはず。いろいろなポイントの解像度が高いからこそ「もっといろんなところを8Kにできたのでは!?」という欲求が出てきてしまいました。

アオヤギ 実際最初の方はわりと記号的ですよね。最初のRADWIMPS(「風たちの声」)のあたりまではかなりわかりやすく描いている。須賀はよかったけどなー……でも須賀がよかったのか、須賀の部屋(事務所)がよかったのかわからなくなってきたな……。須賀のディテールが最高だと思っていたけど、須賀の部屋のディテールがよかったのかもしれない……。

コメント:設定ガバガバだと言われているのは、意味深なシーンを回収していないからでは?

ありまよ 家出の理由はわかんないよね。

アオヤギ 言ってますよ! なんとなく息苦しかったんですよ!

ありまよ なんとなく息苦しくて2カ月家出する……!?

アオヤギ なんとなく息苦しくて2カ月滞在することになったのは結果で、本来は須賀に拾われなければ、陽菜に出会ってなかったらもう帰っているんですよ。ちょっとした家出で終わっていた話が、人の出会いでいることになる。

ありまよ 「序盤があんまり……」という感想見るけど、私はけっこう序盤好き。

アオヤギ よい。でもそれは我々が、編プロ的な仕事の経験があって、「メチャクチャわかるー!」ってなっちゃった、すぐ乗れちゃったからかもしれない。

ありまよ なるほどね。でも新しい街に飛び込んで、居場所が見つかって……ってすごく楽しいじゃないですか。自分が上京したときの感じだったり、『魔女の宅急便』の冒頭的なところを感じて、ずっと見ていられるなと。

アオヤギ わかります。金字塔すぎるけど、『千と千尋の神隠し』の湯屋で働き始めるシーン、あれもずっと見ていられる。新しい環境で暮らし始める楽しい感じは出ていましたよね。ただあの辺はRADWIMPSスキップが使われていて、描かれている以上のものを視聴者に読み取らせている。

コメント:最初、帆高くんが虐待されているのかと思った 

アオヤギ 帆高、家で殴られてはいると思うんですよね。日常的になんとなく殴られている。殴られたときにショックを見せないんですよね。殴られたことがない人は「おやじにも殴られたことないのに!」ってなると思う(笑)。すぐ立ち直るから、殴られなれてる。

コメント:小説版では父親に殴られてます

アオヤギ 殴られているんですけど、合わせて2行くらいの言及しかないんですよね。たぶんそこは深く描く気がない。虐待されているから家出って、理解しやすくなるけど、高校生の男の子が家を出る本質ではないよねという。

ありまよ うん。ないんでしょうね。

コメント:上京組ですが、最初の無鉄砲なシーンがきつい 

ありまよ 逆にきついのパターンですね、それもちょっとわかります。

 

ラスト5分問題

 

アオヤギ 時間も迫っているので、「最後の5分問題」いきますか?

ありまよ いよいよネタバレになりますが……最後の「グランドエスケープ」のシーンがメチャクチャよい。泣いちゃいそうになりながら見て、「あっ、『ラピュタ』だったんだ、この話」ってなったんです。そうだよね、空の上に戻っちゃった女の子は連れ戻さなきゃダメだよね、100支持する! となって……あそこで終わってたら、私の中では『ラピュタ』と並ぶ傑作だった。そこで出てくるのが「3年後はいらなくない?」という説。
3年後の何が許せないかって、微妙に周りの大人がフォローするじゃないですか。「もともと東京は海だったんだよ」とおばあちゃんが言ったり、「最初から世界は狂ってたんだ」と須賀が言ったり。世界観を軽減することを周りの人が言ってくれるあたたかさが、いらないと。地獄を引き受けて二人であることを選べ! みたいな気持ちを、私の中のセカイ系過激派が言い出しました。

アオヤギ でもそういうラストじゃないですか? 最後彼らが選んだのは「引き受け」では?

ありまよ そうなんだけど……いる~? あそこ(3年後)いる?

アオヤギ いる~、いるよ~~~、いる派~~~!

ありまよ 「雨が降り続いている」→暗転→バツンって終わってたらよかったのになって。「大丈夫」が大音量でかかって終わってたら最高傑作。

アオヤギ 私も劇場で見てたときは、暗転する瞬間に「あっ、終わった!」と思って拍手の準備をしてましたよ。

ありまよ そう、きた~!と思ったら、「仰げば尊し」。あ~、後日談やっちゃうか~と。

アオヤギ あれ後日談じゃないんですよ! あれがラストなの。

ありまよ いや~……(不服)。

アオヤギ あれは大人はそういうし、彼らが決断したことも知らなくて、単純に天気が変わったと思っている。でもそれぞれ責任を抱いていくよという話だと思った。

ありまよ でも、抱けないじゃん。抱けなくない? 責任とれない。

アオヤギ 取れないけど……陽菜ちゃんが祈ってるシーンがわかりやすくて、たぶん彼女はずっと祈ってる、けど祈ってもたぶん……

ありまよ 何も起こらない。

アオヤギ でも祈り続けているのって、けっこうビターじゃないですか?

ありまよ けっこう優しいエンドだなと思う。もっと地獄で終わってほしかった。

アオヤギ 地獄だよ! でも地獄だけど「大丈夫だよ」という話なのでは?

ありまよ 大丈夫じゃなくしてほしかった! これは単なる好みというか、解釈の違いなんだけど、私は「愛にできることはまだあるかい」って話よりは、どっちかというと「愛にできることはこれしかない」という話だと思って見てたんです。「もともと、これくらい愛にはできることがあって、こんだけ失われてしまったけど、まだこれが残っているよ」という差分的なものではなく、「本当にすごく小さなことしかできないんだけどいいですか?」という話だと思って見ていて、それが気持ちよかった。気持ちいいまま終わってほしかったなという。

アオヤギ まあ確かに、あそこ(暗転)で終わったらオシャレでしたけど……

ありまよ 「全く大丈夫じゃない状況下で、全くだいじょばない祈りみたいな『大丈夫』を言うことしか、マジマジのマジちっぽけな僕にはできないよ」、という話の方が好き。と、私の中の中二が囁くのですよ……

アオヤギ わからんでもない。が、世の中つらいから……

コメント:「3年間雨が降ってた」で終わりでOK 

ありまよ 違うんですよ、あそこで切るんだったら、「3年後」かどうかもわからないから。「そのあと雨は永遠に降り続いた」で終わるんですよ。

アオヤギ それ、帆高君がナレーション入れられなくないですか? 帆高には永遠がわからないから。

ありまよ わからないけど、少なくとも帆高が死ぬまでは降り続くわけですよ。

アオヤギ あそこで終わったらオシャレでしたけど、やっぱりRADWIMPSの「大丈夫」がすごいいい曲で、出だしが最高。「世界が君の小さな肩に乗っているのが僕にだけは見え」るシーンで、陽菜ちゃんの立ち姿が出てくる。「マジじゃん!」って思った。陽菜の肩に世界がのしかかっている!

ありまよ いや、あれはあの絵がなくても見えますよ! 暗転してスタッフロール流して「大丈夫」流したら、それだけで陽菜ちゃんが祈ってる姿が見えるっしょ!

アオヤギ 見えないよ~~!!!

ありまよ 見えるよ~!「そうだよね、陽菜ちゃんの肩ちっちゃかったよね泣」ってなるよ! そこは観客をもうちょっと信頼しても……どう?

アオヤギ う~~~~~~~~ん……

ありまよ ……という話を同僚にしたら、「大多数の人はたぶんわからないから、そのエンドは『オタク限定エンド』で作ったらよかったかもね、バルト9あたり限定で」と言われましたね。

コメント:君の名は。で少女に背負わせすぎという意見があった 

アオヤギ まあわからんでもない。

ありまよ ちょっと軽くしてあげた結果なのかな。……三葉背負ってる?まあでも故郷なくなってるしな……。

アオヤギ セカイ系の文脈でいうと多くは少女が背負うものですからね。

ありまよ でも新海さんの作品、そんなに少女が背負っているかな?

アオヤギ 新海さんの作品は、彼女が気付かないうちに背負っていることが多い。一番構成が似ていると言われているのが『雲の向こう、約束の場所』で、少女が背負っていますね。でも解決方法が「それでいいの?」というところがあり……その辺が今作との大きな差だと思います。背負って生きていく。

細田守さんが好きすぎる

コメント:天気の子見ました。傑作でした。ラスト3年後の雨の東京でモブが「お花見楽しみだねー」と話していたのが印象的だったんですが伝わりますかね…… 

ありまよ わかる! 雨の中お花見してるんだよ、この世界では……。あれはよかったよね。

アオヤギ 適応が速いんだよ……。今回モブの会話を意識的に聞かせていて、マックで「私ばっかり好きでさ」とか、わざわざ聞かせている。

ありまよ モブがよかっただけに、前作のキャラいる?ってところはどうですかね。モブが出てくるたびにちょっとドキッとする。「これはただのモブか!?」判断によってちょっと現実に戻ってしまう。

アオヤギ 解像度で言うと、瀧くんが3dpiくらいじゃなかったですか? 動きがAIみたいな……

ありまよ あれ本物の瀧くんかな? イマジナリー瀧くんじゃない? でも神木くんがよすぎて、登場した瞬間に「あれ、主人公出てきた?」ってなっちゃった。

アオヤギ 神木君は新海のことが好きだから、「俺が一番新海をわかってる!」みたいな気持ちであれに声を当ててると思う。

ありまよ 新海さんの一番の才能ですよね。野田(洋次郎)さんも川村(元気)さんも「俺が一番新海をわかってる」と思ってるでしょう。

アオヤギ 野田ね!!!!

ありまよ 呼び捨て!???(笑)

アオヤギ Yojiro Nodaがこの映画を作ったわけですからね。すごい。「有心論」を最初に聞いたときに「なんだこの恋にイカれた男は」とビビりましたけど、今回の曲はよかった。「グランドエスケープ」「愛にできることはまだあるかい」「大丈夫」は、全て新海と相互に響きあって作品を生んでるじゃないですか。マジ…付き合ってるじゃん……。好きってことじゃん。

 

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ありまよ オッ、細田守さんの話をしてしまいますか? 我々ちょっと細田守さんを好きすぎる……。

アオヤギ Twitterでブロックされてますけどね……。細田守さんの親友の橋本カツヨさんのことをこんなに好きなのに、愛しているのに、ブロックされていますからね……。

ありまよ 誰かがTwitterで書いてましたけど、細田監督は「家族」テーマをやめて、ケモケモショタショタイケオジ!!!!みたいな映画を欲望のままに作ってほしいです。女の子は出さなくてもいいくらい。

アオヤギ 世間の期待を新海に全部背負っていただいて……。一時期は「次のジブリ細田だ!」みたいな空気がどこかにあったじゃないですか。細田監督は規模を小さくした作品を出してみてほしい。人間の悪意とかがバリバリに出る話を……。

ありまよ この話長くなるな。コメントもいっぱいきてる、皆細田さんについて語りたいんだね……。

アオヤギ この話は無限にできるけど、話戻して「受け入れられ方」でいうと、宣伝がとにかくうまいですよね。『君の名は。』も、一般層にいくぞ!という意気込みがあって、宣伝をバリバリしてたし、10億突破は当たり前な熱があったと思います。今回も250億はいかないけど100億はいきたいという熱があったんじゃないかと。

ありまよ でも『天気の子』、『君の名は。』の300倍くらいいい映画じゃない!? これはすごく言いたい。好きな人がいたらごめんなさい、『君の名は。』が私は全然ささらなかったからなんですけど……。『天気の子』めっちゃいいので、同じくらいたくさんの人に見てほしいですけどね。

アオヤギ 確かに300倍いい。

ありまよ 同時に「次だな!」とも思っていて。次に何を作るんだろうと気になっています。これまでの新海誠作品批判を今回完全に突破しているじゃないですか。次どこに行くんだろう? がすごく楽しみ。

コメント:君の名は。のときも言われていたことだなー

ありまよ そうなの? 『君の名は。』は比較的今までの新海さんじゃないですか……?

アオヤギ 一応最後の、すれちがって振り返るじゃないですか。すれ違っていた新海監督の男女がようやく出会ったという意味では、新しい場所に行っていた……?

ありまよ それは5ミリくらいの進化だけど、今回はめっちゃ長い時を一緒に過ごしているから、300倍くらいの伸び率ですよ!

アオヤギ 我々は『天気の子』好きですけど、けっこう賛否が割れていて。それは新海監督が想定していた「帆高の選択に賛否両論」とかではなくて、もっと前に「帆高のことが全然わからない」みたいなところで割れていて。それを踏まえて、新海監督がまた考えることがあると思うんですよね。真摯に作るとはどういうことなのか、を考えて、もっとわかりにくくするとか、もっとわかりやすくするとか、そういうことを考えて出してくれるんじゃないかなーと。……メッチャ新海大好きになっちゃった。

ありまよ 私も今回うれしくて、やっと新海作品と“和解”できたという、変な感慨がありました。

アオヤギ TwitterのTLでは「初めて新海作品と目が合った」と言ってる人がいました。

ありまよ わかる。ぜひ「新海作品はnot for meですわ」という人は見に行ってほしい。

アオヤギ 逆に『君の名は。』が世界で一番好きという人には合わないかも。

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ありまよ びっくりしましたね。「透けてるほうでよかったな……」と思った。

アオヤギ 「脱ぐんだ!」。ラブホのシーンはめっちゃよかったんだよな~。

ありまよ 高揚感ですよね。あんな状況で追い詰められて、子供だけでラブホに行ったら、そりゃ楽しいよ。

アオヤギ みんなあれが最後の一日だってなんとなくわかっているからはしゃいでいる……。

ありまよ ちょっと躁状態だもんね。災害が起こったときに、不謹慎だと思いつつ、ちょっとテンション上がってしまう自分がいる。「会社休みになるから、人死にが出ない程度に台風が来てほしい」と思ったり、「電車が止まっちゃったからみんなで居酒屋行こうぜ!」と繰り出したり、というときの高揚感ってあるじゃないですか。ここ数年の日本の自然災害はシャレにならなくて、本当に大変な思いをしている人がいる一方で、その高揚感もみんなにとって既視感のあるものになりつつある、その掬い取り方がすごくうまい。ギルティな気持ちよさがよかったです。

アオヤギ 運転中止になった電車の中で雪に浮かれる男の子とか、350dpiでしたわ。